労働衛生(有害業務)は、第一種で10問出題される最重要分野です。この記事では、覚えにくい分類と数値を「語呂+理由」のセットで整理します。
この記事で学べること
- 有機溶剤 第1〜3種の見分け方(覚えるのは第1種と第3種だけ)
- 特定化学物質 第1〜3類の整理と、頻出ひっかけの回避法
- 制御風速・WBGTなど数値を「理由から再現する」覚え方
まず結論
有害業務は「分類+数値」を理由とセットで覚えるのが最短です。有機溶剤は第1種(2物質)と石油系の第3種だけ覚え、残りは第2種と判断します。数値は配置や役割の理屈が分かれば、その場で再現できます。
有機溶剤|第1〜3種は「小さい箱から」覚える
第2種は約40物質と多いので、全部覚えるのは非効率。発想を逆転させ、数の少ない第1種(2物質)と石油系の第3種だけを覚え、それ以外は自動的に第2種と判断します。これが指導現場でも使われる王道です。
| 種別 | 有害性 | 代表物質(覚える軸) |
|---|---|---|
| 第1種 | 最も高い | 2物質だけ:1,2-ジクロルエチレン/二硫化炭素 |
| 第2種 | 中程度(最多・約40物質) | トルエン・キシレン・アセトン・酢酸メチル・メタノール 等 |
| 第3種 | 比較的低い(石油系) | ガソリン・石油ナフサ・石油ベンジン 等 |
覚え方(語呂合わせ)
「第1種はVIP2名様(ジ・ニ)だけ、第3種はガソスタ組(石油系)、残りは全員“その他大勢”の第2種」
第1種の2名:「“ジ”が2つ」=1,2-ジクロルエチレン+二(ニ)硫化炭素
第2種の常連:「トル・キシ・アセ・さくメ・メタ」=トルエン/キシレン/アセトン/酢酸メチル/メタノール
💡 なぜ納得できるか
トルエン・キシレン・アセトン・酢酸メチル・メタノールは実務でも頻出の代表選手。「これらは第2種」と直接言えると消去法の精度が上がります。シンナーの主成分がトルエン、と紐づけると忘れません。
よくある勘違い
✕ クロロホルムや四塩化炭素は有機溶剤中毒予防規則の対象
〇 2014年改正で有機則→特化則(第2類・特別有機溶剤)に移行済み。「クロロホルムは何則?」→特化則が正解です。
✕ 第1種有機溶剤=製造禁止
〇 第1種は使用可能(規制が最も厳しいだけ)。製造禁止物質(石綿・ベンジジン等)は安衛法第55条で別に規制されています。
局所排気装置|制御風速は「配置が不利なほど大きい」
| フード形式 | 制御風速(有機溶剤) | 特徴 |
|---|---|---|
| 囲い式(密閉型) | 0.4 m/s 以上 | 発生源を囲む。効率が高い |
| 外付け式(側方・下方) | 0.5 m/s 以上 | 発生源の横・下に設置 |
| 外付け式(上方) | 1.0 m/s 以上 | 上昇気流に逆らうため最も高速が必要 |
覚え方(語呂合わせ)
「囲っちゃえば省エネ(0.4)、横・下からはやや本気(0.5)、真上は上昇気流との根性勝負(1.0)」
💡 なぜ納得できるか
発生源を囲めば少ない風で吸える(0.4)。横や下からはやや強めに(0.5)。上方フードは“上に昇ろうとする煙”を引き戻すので一番不利=最強の風速(1.0)。数字を丸暗記せず「配置が不利なほど大きい」と理解すれば順番で再現できます。
特定化学物質|第3類は「8物質」を丸ごと覚えるのが最短
危険度の“質”で分かれています。第1類は国(厚労大臣)の許可が要るほど危険で数が少ない。第2類はじわじわ効く慢性・発がん系(特別有機溶剤の置き場でもある)。第3類は一気に漏れると急性中毒を起こす刺激性ガス・強酸です。
| 分類 | 性質 | 代表物質 |
|---|---|---|
| 第1類 | がん原性が極めて高い/製造許可制 | ジクロルベンジジン、PCB 等(少数) |
| 第2類 | 慢性障害・発がんの疑い(特別有機溶剤を含む) | ベンゼン、ホルムアルデヒド、クロロホルム、塩素 等 |
| 第3類 | 大量漏洩で急性中毒(刺激性・腐食性) | アンモニア・一酸化炭素・塩化水素・硝酸・二酸化硫黄・フェノール・ホスゲン・硫酸(8物質) |
覚え方(語呂合わせ)
「1類は国の許可がいる“超VIP”(少数精鋭)、2類はじわじわ効く慢性・発がん系、3類は漏れたら即アウトの急性組」
第3類はたった8物質。覚えるべき4本柱は「アンモニア・塩化水素・硝酸・硫酸」(身近な刺激性ガス・強酸)。
💡 なぜ納得できるか
第3類は8物質しかないので丸ごと覚えるのが最短。特にアンモニア・塩化水素・硝酸・硫酸は頻出。この4つを核に、残り(一酸化炭素・二酸化硫黄・フェノール・ホスゲン)を足していけば完成です。
よくある勘違い
✕ 「塩素」は刺激性ガスだから第3類
〇 塩素は第2類(特定第二類物質)。第3類の塩化水素と混同しない。塩酸は塩化水素の水溶液なので3類グループで覚えてOKです。
✕ 第3類=有害性が低い
〇 大量漏洩で急性中毒を起こす危険物。規制の中心が製造設備(特定化学設備)の漏えい防止にある、という整理です。
粉じん・じん肺|原因と不可逆性を押さえる
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| じん肺の原因 | 遊離ケイ酸(SiO₂)を含む粉じんの長期吸入 |
| 主な疾患 | ケイ肺(石炭・岩石の粉じん)・石綿肺(アスベスト) |
| 特徴 | 不可逆(肺の線維化)。肺結核・肺がんを合併することがある |
| 予防 | 湿式作業・防じんマスク・局所排気装置 |
騒音・振動|4000Hzの「クレーター」
| 項目 | 基準値・内容 |
|---|---|
| 聴力検査の周波数 | 1000Hz・4000Hz(騒音性難聴は4000Hzに特徴的な低下) |
| 騒音性難聴の部位 | 内耳(蝸牛)の有毛細胞が障害される |
| 振動障害 | レイノー現象(白ろう病):手指の血流障害・蒼白化 |
覚え方(語呂合わせ)
「騒音性難聴は4,000Hzにポッカリ穴。聴力グラフに“月のクレーター”(c⁵ディップ)」
「振動工具で指が白く(しろう)なる=白ろう病(レイノー現象)」
💡 なぜ納得できるか
騒音性難聴は4000Hz付近が真っ先にやられ、聴力グラフがその一点だけクレーター状にへこみます(c⁵ディップ)。振動工具による白ろう病は、指の血管が縮んで白くなるレイノー現象。名前が症状そのままなので納得しやすいです。
温熱環境(WBGT)|湿球が「主役の0.7」
| 条件 | 計算式 |
|---|---|
| 屋外(日射あり) | 0.7×湿球温度 + 0.2×黒球温度 + 0.1×乾球温度 |
| 屋内(日射なし) | 0.7×湿球温度 + 0.3×黒球温度 |
覚え方(語呂合わせ)
「湿球はいつでも主役(0.7)の看板役者。乾球は屋外でチョイ役、屋内では出番なし」
💡 なぜ納得できるか
湿球温度は“汗が蒸発して体を冷やせるか”を表し、熱中症リスクに最も直結するから重み0.7。日射のない屋内では太陽の影響=乾球を考えなくてよいので2項(0.7+0.3)になります。
確認問題
Q1. クロロホルムが規制されているのは、有機則と特化則のどちらでしょうか?
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Q2. 外付け式フード(上方)の制御風速は何m/s以上でしょうか?
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Q3. 屋内(日射なし)のWBGT計算式は?
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現場ワンポイント
化学物質管理の支援では、最初にSDS(安全データシート)で「何の物質か」を確認するところから始まります。トルエンやキシレンは現場でも本当によく登場します。試験で覚えた分類は、実務でSDSを読み解く第一歩になります。
【補足】化学物質管理は「自律的な管理」へ移行が進んでいます
有機溶剤・特定化学物質などの規制は、これまで国が物質ごとに細かくルールを定める方式が中心でした。近年は、事業者が自らリスクアセスメントを行い管理する「自律的な管理」へと移行が進んでいます。
ラベル表示・SDS(安全データシート)の交付対象物質は年々追加されており、SDSの通知義務に関する規制強化も進んでいます。最新の対象物質や施行時期は厚生労働省のサイトでご確認ください。
今日のポイント
- 有機溶剤は「第1種2つ・第3種は石油系・残りは第2種」で判断する
- 特化物の第3類は8物質を丸ごと。塩素は第2類のひっかけに注意
- 制御風速とWBGTは丸暗記せず、「配置が不利ほど大」「湿球が主役」の理屈で再現する
覚えたら過去問で確認しましょう。教材選びは【2026年版】衛生管理者試験のおすすめテキスト・参考書と選び方、他科目の頻出は【科目別まとめ】衛生管理者の出るところだけ覚える頻出リストをご覧ください。
📚 出典・参考:厚生労働省/e-Gov 有機溶剤中毒予防規則・特定化学物質障害予防規則・じん肺法。法改正・対象物質の扱いは更新される可能性があるため、最新情報は公式サイトをご確認ください。
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✍️ 筆者について
衛生管理者のトリセツ編集部は、労働安全衛生分野の実務に携わる専門家チームです。安全衛生の現場経験をもとに、受験対策から資格取得後の実務まで、正確で役立つ情報を発信しています。詳細は プロフィール をご覧ください。
⚠️ 本記事は執筆時点の法令・制度・公式情報をもとに作成しています。最新情報は厚生労働省・公益財団法人 安全衛生技術試験協会等の公式情報をご確認ください。


